移行の進め方と引き返し方
4段階に分け、どの段階でも MT をそのまま動かし続けられる形で進めます。引き返す判断は3段階目まで取り消し費用ゼロで持てます。
移行を一度の切り替えとして計画すると、だめだったときに戻る先がありません。Kiln への移行は、MT を動かしたまま並行で組み立てられます。だから「やってみて、見てから決める」という順番が取れます。
始める前に決めておくこと
お問い合わせフォームと、コメントの受け付けの移し先です。どちらも読者が何かを送る機能で、公開されるのが HTML だけになると受け取る相手がいなくなります。代わりの手段は確立していますが、Kiln が同梱しているわけではありません。ここが決まっていないと、4段階目の直前で止まります。
サイト内検索は止まりません。公開のときに索引を書き出し、ブラウザ側で絞り込む形に変わり、MT の検索結果テンプレートはそのまま引き取ります。直すのはフォームの送信先1か所だけです。どちらもくわしくは変わらないと言える根拠の最初の2節にあります。
4段階に分け、3段階目まではいつでもやめられる
| 段階 | やること | MT は | やめる費用 |
|---|---|---|---|
| 1. 読み込み | MT のデータベースの写しを渡し、記事・テンプレート・URL を取り出す | そのまま稼働 | ゼロ(作業時間だけ) |
| 2. 突き合わせ | 自社のテンプレートとデータで、MT の出力と1文字ずつ比べる | そのまま稼働 | ゼロ |
| 3. 並行運転 | MT で記事を書き続けながら、Kiln 側も同じ内容を公開しておく | そのまま稼働 | ゼロ |
| 4. 切り替え | 公開先を Kiln の出力に向け、記事を書く場所も移す | 読み取り専用で残す | 切り戻しは公開先を戻すだけ |
1段階目と2段階目は、MT の本番環境に一切触りません。必要なのはデータベースの写しです。ここで「自社のテンプレートが通らない」「使っているプラグインの機能が無い」と分かれば、その時点でやめても失うものは調査の時間だけです。
2段階目が、この移行のいちばん大事な工程
ここで出てくる報告が、判断の材料そのものになります。
読み込みの報告には、想定と違うデータの持ち方に出くわした箇所が全部並びます。自動で補った箇所はそう書かれ、判断できなかった箇所もそう書かれます。黙って落として先に進むことはしません。報告に出た行を上から消していく作業が、2段階目の実務です。
同時に、テンプレートが使っている機能のうち Kiln に無いものが一覧で出ます。多くの場合それはプラグインが追加した機能です。ここで出た数が、移行の難しさをほぼ決めます。ゼロなら2段階目は数時間で終わります。10個あれば、それぞれを「作る」「諦める」「別の手段に替える」のどれにするか決める作業が加わります。
そして URL の照合です。MT が公開したファイルの一覧と、Kiln が作る URL を1件ずつ比べ、消えるものがゼロになるまで直します。
3段階目は、何週間でも続けられる
MT を編集システムとして動かし続けながら、更新された分だけを Kiln 側に取り込んで公開します。公開先はまだ本番ではなく、関係者だけが見られる場所に置きます。
この状態で、見比べてください。トップページ、記事ページ、カテゴリ一覧、検索結果、フィード。実際の記事で、実際の更新頻度で、何週間か回してから切り替えるかどうかを決める——この順番が取れることが、段階に分ける一番の理由です。
筆者としては、この並行運転を2週間から1か月は取ることをおすすめします。前の節に書いたとおり、本番で動いた実績がまだ無いためです。
切り替えたあと、何が変わるか
切り替えたあと、編集担当者の仕事はほとんど変わりません。管理画面で記事を書き、公開ボタンを押します。変わるのは待ち時間だけです。
変わるのは運用側です。公開は手元か社内のサーバーから行うことになり、公開済みの HTML を置き先に送る工程が入ります。ここは自動化できますが、「誰がその仕組みを見るのか」は決めておく必要があります。制作会社に任せているなら、そこが引き受けられるかを2段階目のうちに確かめてください。
制作会社に頼む場合、確認してもらう3つ
テンプレートの保守を制作会社に出しているなら、1段階目と2段階目はそのまま依頼できます。見積もりを取るときに確認してほしいのは次の3点です。
- 2段階目で出る「足りないテンプレート機能」の一覧を見て、作り直せるかどうか。できないものがあれば、どの機能かを先に教えてもらう
- 切り替えたあと、公開済みの HTML を配信先に送る工程を引き受けられるかどうか。自動化はできますが、動かなくなったときに見る人が必要です
- Git でテンプレートを受け渡す形に変えられるかどうか。これは移行後の運用がやりやすくなる話で、必須ではありません
断られた場合でも1段階目と2段階目は社内で回せます。必要なのは MT のテンプレートを読める人1人です。
誰が、どれくらいの時間で
読み込みと突き合わせは、MT のテンプレートを読める人が1人いれば進みます。プラグインの機能が多いサイトでは、それを作り直せる人が必要になります。
期間は、プラグインの依存度でほぼ決まります。標準テンプレートに近いサイトなら、1段階目と2段階目で数日。プラグインの機能を10個作り直すなら、そこが工程の大半になります。筆者はまだ自社以外の移行を手がけていないので、この見積もりは【未検証】の推定です。実サイトの事例が出れば書き直します。
だから予算は、2段階目の報告が出るまで仮で置いてください。足りない機能の数が出た時点で、工数は見積もれます。それより前に確定させると、たいてい外れます。
次に見るべきは費用と体制でしょう。費用・体制・向き不向きに、やめたほうがよいサイトの条件まで含めて書きました。